「退職金、どう使うか考えてる?」
親にそう聞けたのは、お金の勉強を始めてからのことです。
父がリタイアしてしばらく経ちます。長い間、勤勉に次ぐ勤勉で働き続けた父に、それなりの退職金が入ったようでした。
でも、その使い道について、私たち家族はほとんど知りませんでした。
ある日の何気ない会話で、私は少しだけ「ざわっ」とします。
お金の知識を持っていると、何気ない親の一言が、こんなふうに聞こえ方が変わるのだと気づいた体験談です。
この記事でわかること
- 退職金にまつわる「名義預金」の落とし穴
- 親の善意が思わぬ相続トラブルになることがある理由
- お金の知識があると、親子の会話がどう変わるか
親の優しさが生んだ「お金のズレ」
会話から見えた「使いみち」と「安心」の違い
ある日、父とこんな話になりました。
父「退職金から少しずつ、娘や孫に残したらいいかな?と思ったけど、
結局、生命保険を買ったからそれはしなかったんだよ」
私「ふーん、そんなこと考えてたんだね。贈与税の対策?」
父「そんなのあるの?」
私「…(知ってるわけないか)」
父「同じようなこと考える親は、たくさんいるんじゃない?」
私「…(まだまだ勉強しないと)」
笑ってしまいそうな会話ですが、私の中では「あれ、これ大丈夫かな」という引っかかりが残りました。
以前の私なら、「ありがとう」で終わっていたと思います。
でも今回は、FP3級の勉強で得た知識が、頭の片隅でアンテナを立てていたんです。
「名義預金」という落とし穴
善意で始めたことが、相続トラブルの種になる
聞いてみると、父はこんなことを考えていたようです。
「私(娘)名義の口座を作って、毎年いくらかずつ振り込もうとしていた」
気持ちはとても嬉しい。でも、これには注意が必要です。
名義は子ども(私)であっても、実質的にお金を管理・支配しているのが親の場合、「名義預金」と判断される可能性があります。
名義預金とみなされると、たとえ子ども名義であっても相続財産に含まれて相続税の対象になることがあります。
また、相続が始まる前に子どもが受け取っていた場合、金額によっては贈与税がかかることも。
父の「残してあげたい」という気持ちに、素直に感謝しつつ。
制度の話を抜きにできない場面って、あるんですよね。
贈与税の基本を知っておくと話が変わる
年110万円の非課税枠を正しく使う
贈与税には、年間110万円までの基礎控除があります。
毎年110万円以内であれば、贈与税はかかりません。
ただし「名義預金」にならないためには、
- 受け取る側(子ども)が口座を自分で管理していること
- 贈与の事実を双方が認識していること
- 通帳・印鑑を子どもが持っていること
といった点が重要です。
「毎年適当な額を振り込もうと思ってた」という父の発言は、まさにここが曖昧でした。
贈与の形式を整えることで、父の善意が正しく伝わる形になります。
知識が「お金の話」を穏やかにする
お金の仕組みを少し知っているだけで、会話の空気は変わります。
「それはダメ」「それは危ない」と言わなくても、
仕組みを共通言語にするだけで、感情的にならずに話せる場面が増えました。
知識は、誰かを説得するためじゃなく、落ち着いて話すための土台なんだと思います。
父の退職金も、これから続く私たちの暮らしも。
「なんとなく」で済ませないことが、結果的に父の気持ちを一番守ることになるのかもしれません。
よくある質問
Q. 親が子ども名義の口座にお金を入れていたら、全部「名義預金」になりますか?
A. 必ずしもそうではありませんが、子どもが口座を自分で管理していない・贈与の認識が双方にないなどの場合、名義預金と判断されるリスクがあります。通帳や印鑑を誰が管理しているか、贈与契約書を作っているかなどがポイントです。不安な場合は税理士や行政書士に相談することをおすすめします。
Q. 毎年110万円ずつ贈与すれば必ず税金はかかりませんか?
A. 年間110万円以内の贈与は原則非課税ですが、「最初から数年分をまとめて贈与する意図があった」と判断されると、連年贈与として一括課税される場合があります。毎年、贈与の時期・金額をあえて変えるなどの対策が有効とされています。FP3級の学習でも、贈与税の非課税枠の使い方は重要テーマのひとつです。
Q. 退職金の受け取り方で税金は変わりますか?
A. 変わります。退職金には「退職所得控除」があり、勤続年数が長いほど控除額が大きくなります。一括受け取りと年金形式での受け取りでも税の扱いが異なるため、どちらが有利かは個人の状況によります。親の退職金の使い道を考えるなら、受け取り方の税制も一緒に確認しておくとよいでしょう。
まとめ
親の「残してあげたい」という気持ちは本物です。
だからこそ、その気持ちが正しく伝わるよう、制度の仕組みを知っておくことが大切だと思います。
まず一歩として、「うちの親は名義預金になっていないか」を確認してみてはいかがでしょうか。通帳・印鑑の管理が誰のものか、そこから話が始められます。



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