「うちには、生命保険なんてないけんね」
相続の話し合いの席で、母はそう言い切りました。
ところが帰宅後、母が証券を見直したら……あったんです。
それも、解約すれば400万円近くが戻ってくる、終身の生命保険が。
このページでは、「保険なんてない」と断言した母が、実は忘れていた生命保険が見つかり、そこから母が自分で動き出すまでの記録を書いています。
正直、親が昔入った保険なんて、面倒で見たくもないですよね。私もそうでした。
でも、ほんの少しの「ひと言」で、親は動き出すことがあります。
この記事でわかること
結論から言うと、「生命保険はない」と言い切る親ほど、一度いっしょに証券を確認する価値があります。
本人が「預金みたいなもの」と思い込んでいる生命保険を、実は持っているケースが少なくないからです。
そして、確認できたら次はこう声をかけてみてください。
「元気な今のうちに、納得して受け取ったら?」──この一言が、親の背中をそっと押します。
「生命保険はない」と断言した母
きっかけは、母が持つマンションの今後について、家族(母・妹・私)で話し合ったことでした。
その流れで「遺言を書いておこうか」という話になり、母も同意。
このとき母は、きっぱりとこう言いました。
「相続でプラスされるのは、不動産と預金だけ。生命保険はないけんね」
FP3級で相続をかじっていた私は、「保険があるかないかで話は変わるんだけどな」と思いつつ、その日は「そうなんだ」と聞いていました。
ちなみに父にも以前、似たような保険について「これ、遺すつもりだった?」と聞いたことがあります。父は「いやいや、いつか解約するつもりやった!」と、あっけらかんとしたもの。
……たぶん、ずっと後回しにしているのでしょう。実家あるある、かもしれません。
帰宅後、証券から出てきた「忘れていた保険」
ところが後日、母が証券を見直すと、思いがけないものが出てきました。
解約返戻金のある終身生命共済です。
契約は2008年、母が52歳のとき。
早期退職金を元手に、一時払いで約312万円を支払い、死亡保障500万円の終身保障に入っていました。
今71歳の母が解約すると、約390万円前後が戻ってくる見込みでした。
第三者(私)に「それ、生命保険だよ」と言われて、母はようやく「ああ、これがそうなのね」と納得した様子でした。
自分で持っているのに「生命保険はない」と断言していた──本人の中では、本当に「引き出しにくい預金」だったのだと思います。
なぜ「預金みたい」に上書きされたのか
実は、母にも最初は気持ちがありました。
10年ほど前、母はこう言っていたんです。
「私に何かあったら、あんたたちに500万ずつ残してるけんね」
当時、まだ経済力のなかった私は、「私たちのためにお金を確保してくれてるんだ、ありがとー」と、わりと呑気に受け止めていました。
つまり契約当初、母にはちゃんと「子どもに残したい」という保障の気持ちがあったのです。
でもそこに「長く持てば増えますよ」という説明がセットでついてきた。
その結果、17年という時間をかけて、保障の記憶が少しずつ薄れ、「預金みたいなもの」へと上書きされていったのだと思います。
証券の下には、こんな注意書きもありました。
「短期間で解約された場合、解約返戻金が払い込んだ掛金を下回ることがあります」
つまり契約直後なら元本割れもあり得た。預金とはまったく別物です。
それでも「預金感覚」になってしまうのは、「貯蓄になって保障もつく」という一石二鳥の売り方が、商品の本質を見えにくくするから。
これは母に限らず、私たちの親世代の多くに当てはまる話ではないでしょうか。
「2008年に入ったのは、実は有利だった」という発見
おもしろいのは、母が自分でネットで調べてきたことです。
今、同じ500万円の死亡保障に58歳の女性が一時払いで入ると、約450万円かかるのだとか。
2008年当時は約312万円。同じ保障でも、今より100万円以上安く入れていたわけです。
理由はおもに2つあります。
- 2008年は保険の「予定利率」がまだ高めだった(予定利率が高いほど、一時払いの保険料は安く済みます)
- その後、平均寿命が延びて、保険会社が同じ保障を準備するのに必要な原資が増えた(=買う側の負担が大きくなった)
この「平均寿命が延びると保険料が上がる」という仕組みは、実はFP3級の試験にも出てきます。大数の法則と収支相等の原則──保険のいちばん基礎の考え方です。
テキストで覚えた知識が、母の証券の前で「これか!」とつながった瞬間でした。
母にかけた、たった一言
調べたことを踏まえて、私は母にこう伝えました。
「そこまで自分で調べて判断できる人なんだから、元気で活動できる今のうちに、納得してキャッシュにするのがいいと思うよ。
2008年は予定利率がよかった時代だし、今は寿命が延びて保険会社の原資も必要だから、買う側の負担が大きくなってる。同じ商品を買うならラッキーなタイミングだったってこと。
当時、私たちのために考えてくれてありがとうね」
「元気なうちに」で背中を押しつつ、「当時のあなたの判断、悪くなかったよ」と感謝も添える。
母の決断を急かすのではなく、母自身が「自分で決めた」と思えるように、という気持ちでした。
返ってきた母の言葉が、また清々しかった。
「85歳まで粘って大金をもらっても、自分ではもう使い切れんしね。
大病したときに役立つかもしれんけど、お金がなかったら、そのときはそのときだ(笑)
近いうちに解約の方向で動くよ」
71歳にして、この腹の据わり方。
しかも自分でネット検索し、新規加入なら450万円という情報まで持ってくる行動力。
「自分のコスパの良さ」まで、ちゃんと理解していました。
解約は「元気なうちに」がいい、もう一つの理由
もう一つ、母の背中を押した事情があります。
母はこれから「遠くに出かけることをしたい」と、妹に話していたそうです。
使う目的が、ちゃんとある。
だったら、85歳まで保険の中に眠らせておくより、元気に動ける今、自分の「やりたい」のために使ったほうがいい。
妹も、その話を聞いて「解約して使えばいいよ」と背中を押す側にまわりました。
ちなみに「大病に備えて残しておくべき?」という不安もありますが、日本には高額療養費制度があり、医療費の自己負担には毎月の上限が設けられています。
ただし注意したいのは、この制度が2025年8月以降、70歳以上にとってはむしろ負担が増える方向で見直しが進んでいること。
制度に過度に頼るより、「元気なうちに、自分のお金を自分で動かしておく」判断には、それなりの意味があると感じました。
(※具体的な治療や金額の判断は、必ず最新の制度とご自身の状況をご確認ください)
金融リテラシーは「見せる」と伝わる
この一連のやりとりで、いちばん驚いたのは家族の変化でした。
金融の話にうとかった妹が、自分から「そのお金、やりたいことに使えばいいよ」と言い出す。
母は「資金ロックを解く」なんて言葉を、私との会話で覚えて、たぶんどこかでドヤ顔で使っているはず(笑)
説明して教え込んだわけではありません。
ただ、私が調べ、考え、母とやりとりする様子を、そばで見ていただけ。
それでも、家族の中で確実に何かが動きました。
FP3級を学んでいちばん感じるのは、知識は、説明するより「やっている姿を見せる」ほうが伝わるということです。
母・妹・私の3人グループチャットは、今やちょっとした「お金の実況中継」になっています。
「うちは大丈夫」で終わらせないために
今回いちばん伝えたいのは、「親の保険を疑え」ということではありません。
そうではなく、「ない」と言い切っている本人ですら、把握できていないことがあるという事実です。
親世代は、今ほど情報を比較できない時代に、人生の大きな決断をしてきました。
「あの頃は、こうするしかなかった」。そう思うと、責める気にはなれません。
でも、今の私たちには、調べる手段も、相談できる相手も、選択肢もあります。
だからこそ、「うちは大丈夫」で終わらせず、一度こう聞いてみてほしいのです。
「証券、いっしょに見てみない?」
そして、もし忘れていた保険が見つかったら。
「元気な今のうちに、納得して受け取ったら?」
面倒で見たくないものほど、ひと言が、家族の未来をちょっとだけ明るくしてくれるかもしれません。
よくある質問
Q:解約返戻金を受け取ると、税金はかかりますか?
解約返戻金が払い込んだ保険料を上回った場合、その差益は「一時所得」として扱われます。一時所得には年間50万円の特別控除があるため、差益が50万円以内なら課税されないのが基本です。受け取り方(一括か分割か)によって税金や各種制度への影響が変わることがあるため、まとまった金額になりそうな場合は、保険会社や専門家に相談すると安心です。
Q:払込が終わった保険を、そのまま置いておくのはダメなのですか?
ダメではありません。払込が終わっていれば今後の維持コストはかからず、「解約して現金化する」か「保障を残す」かの二択になります。大切なのは、その保険の目的(誰のための、何の保障か)を本人が納得して選べること。我が家の場合は、母自身が「元気なうちに使いたい」と判断しました。
Q:親が保険の話を嫌がりそうで、切り出しにくいです。
いきなり保険単体で切り出すより、「遺言」や「実家の今後」など、親が関心を持ちやすい話題の延長で証券を見る流れにすると、自然です。我が家も、マンションの相続の話し合いがきっかけでした。「確認する」だけなら親の負担も少なく、思わぬ発見につながることがあります。
まとめ
「生命保険はない」と言い切る親ほど、一度いっしょに証券を見てみる価値があります。
本人も忘れていた保険が見つかったら、「元気な今のうちに、納得して受け取ったら?」と声をかけてみてください。
親が自分で動き出すと、お金の話は驚くほど前向きになります。
そしてその姿は、きょうだいや家族にも、静かに伝わっていきます。
こうして「自分の家族のお金」にまで目を向けられるようになったのは、FP3級を学んだことがきっかけでした。
その経緯は、こちらの記事に詳しく書いています。
👉 FP3級、とってよかった。40代会社員が合格して気づいた3つの変化
また、「親のお金は残す?使う?」という価値観については、こちらの記事でも書いています。


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